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天龍八部 予備知識

(1)国と民族 

この時代の中国はこんな感じです(ウィキペディアの画像です)。

画像を見れば一目瞭然なのですが、この時代の中国大陸には、「宋(北宋)」を中心に、北部に「遼」、西北に「西夏」、西に「吐藩」、南西に「大理」の5つの国があります。
物語の後半では、さらに「金」という女真族の国が新たにおこってきます。
新興国家の「金」は「遼」を滅ぼし「北宋」も滅ぼしてしまうのですが、そこまではこの作品では書かれていません。
北宋と遼は、お互いの領土を巡って断続的に戦争状態が続いており、お互いに敵国人として忌み嫌っています。

天龍八部の主人公達は、全員民族が違います。

簫峯:漢民族として育てられ、遼の契丹人と戦ってきたが、思ってもいない形で自分が“敵国”の契丹人だったと知らされます。
 両親の仇を討つべきか、今までの仲間は敵なのか、彼は、民族と善悪の矛盾に真正面から向かい合わなくてはいけません。
 彼は「遼」の皇帝・耶律洪基(やりつこうき)とも親しくなるのですが、新興国家の「金」の完顔阿骨打(わんやんあぐだ)ともよしみを結んで悩むことになります。
 民族に一番翻弄された人物でしょう。

段誉:大理の皇族・段氏は史実ではタイ系のペー族だそうです。物語上では父方は漢民族の血が濃いようです。母親の刀白鳳はタイ族です。
  段誉は漢民族とタイ族の混血、といったところでしょうか。

虚竹:漢民族です。

暮容復: 暮容氏は、昔滅びた「燕」国の王族の末裔で、燕国の復興を一族の悲願としています。
 燕とは、北宋時代から500年ぐらい前にあった五胡十六国時代の、前燕・後燕・西燕・南燕・北燕という国のことです。
 三国時代の後、隋の前というものすごく古い話です。日本で言えば、鎌倉時代からみた古墳時代の王朝、みたいなものでしょうか。
 民族は鮮卑系ですが、この時代ではほとんど漢民族と同化しています。(というより、激減した漢民族が鮮卑系に飲み込まれたというべきか・・・)

○「西夏」国は、民族はチベット系のタングート人。
  一品堂の赫連鉄樹(かくれんてつじゅ)が、丐幇にちょっかい出しています。
 西夏国の王女・銀川公主は、後半にヒロインの1人として登場します。
 なお公主の義姉にあたる皇太妃の李秋水(りしゅうすい)は、逍遙派の門人で天山童姥の妹弟子です。

○「吐藩」国は、チベットにあるチベット人の国。
  キョーレツな僧・鳩摩智(くまち)の印象が強いですね。金庸の他作品でもそうなのですが、チベット僧というのは怪しげな印象の人物が多いようです。
  後半には、西夏国公主の婿取り話で、下品な王子が出てきます。
  
なお歴史的には、新興の「金」が、宋の首都・東京(とうけい、とうきょうではありません!現在の開封のこと)を落としたあと、宋の王族は南方に逃れ「南宋」となりました。
「射G英雄伝」の時代は、さらに100年程度後の南宋の時代です。
金がすでに衰退し始めていて、蒙古族が部族統一して、金も宋も、西方まで飲み込もうと勢いを伸ばしているところでした。
楊康を育てた完顔パパは金の王族でした。
「神G剣侶」では、蒙古が南宋を落とす寸前の話です。
さらに「倚天屠龍記」では、宋も滅び、すでに元が中国全土を統一している時代になります。

(2)登場人物の名前・呼び方など

ドラマを見ていると、登場人物の呼びかけがとても気になります。
そこで、相手への呼びかけや名前の読み方を書いてみました。(吹き替え版ではあまり関係ないか・・・^_^;)

<発音の基本的知識>  ★読み方は普通話(中国標準語)です。
 *声調について: 1声は高い調子「 ̄」、2声は低→高「/」、3声は低く抑える「V」。4声は高→低「\」、数字無しは軽声。
 *母音の「e」は、「オ」の口の構えで「エ」と発音する。前後の発音によっては「ア、ウァ、エ、オ」とも近く聞こえる。
 *母音の「u¨」は、唇を丸めて言うこもった感じの「イ」で、口を両横に引いて言う「i(イ)」とは別の音です。段誉の誉「yu」や虚竹の虚「xu」はこれですね〜。
 *巻き舌の「er」は、英語のR(R2ーD2のRですね〜〜)に近い発音です。
 *子音の「b」「d」「g」「j」「z」は無気音を表すもので、濁音ではありません。「f」は唇を噛む摩擦音。
そもそも日本語にない発音をカタカナで表記することに無理があるのですが^_^; もっと詳しく知りたい方は、テレビやラジオの中国語講座を聴いてみて下さい!

   呼び方 ピンイン 読み 備 考

簫峯 xiao1 feng1 シャオ・フォン 本名。 
喬峯 qiao2 feng1 チャオ・フォン 昔の名前。「q」は有気音。
喬幇主 qiao2 ban1zhu3 チャオバンチュー 単に「幇主(バンチュー)」とも。
大哥 da4ge1 ターガァー 哥=兄で、「一番上の兄さん、大兄さん」の意。段誉と虚竹がこう呼ぶ。 
「哥(ge)」は日本語では表記しようがない音。
簫大哥 xiao1 da4ge1 シャオ・ターガァー 「簫兄さん」の意。阿朱がこう呼ぶ。原作では「簫大爺(ターイェ)」とも。
簫大侠 xiao1 da4xia2 シャオ・ターシァー 侠客としての敬意のこもった呼び方。阮星竹がこう呼んでいた。
姐夫 jie3 fu チエフ 姐(姉)さんの夫、の意味で「義兄(にいさん)」。阿紫がこう呼ぶ。
大王 da4wang3 ターワン 南院大王の部下がこう呼ぶ。彼に救われた捕虜宋人もそう呼んでいた。

段誉 duan4 yu4 ドァン・イー 「yu」は口を丸めた「イ」。
段公子 duan4 gong1zi3 ドァンコンズー 段家のご子息、という、やや形式的な敬意のこもった呼び方。
王語嫣ちゃんや、暮容復達がこう呼ぶ。
段郎 duan4lang4 ドァンラン 語尾に「郎」を付けるのは「ダーリン、あなた」のニュアンスがある。
段パパもこう呼ばれることがある。
誉儿(児) yu4er2 イーアー 語尾に「儿(児)」を付けるのは、子に対する愛称。両親と叔父がこう呼ぶ。
erは巻き舌で、英語のR(R2-D2のRですね)に近い発音。
小王爺 xiao3wang2ye2 シャオワンイェ 小王子とか若様、の意。朱丹臣や巴天石など大理の家臣達がこう呼ぶ。
三弟 san1di4 サンティー 兄弟三番目の弟、の意。簫峯と虚竹がこう呼ぶ。

虚竹 xu1 zhu2 シーチュウ 「xu」は口を丸める「イ」音の「シ」。
小和尚 xiao3he2shang シャオハーシャン 小坊主、ぐらいの意味。丁春秋や天山童姥など年配者達からこう呼ばれる。
「he」は日本語ではどうにも書きようがない音。
主人 zhu3ren2 チューレン 霊鷺宮の配下の余婆や竹剣達がこう呼ぶ。
夢郎 meng4lang4 モンラン 夢の中のあなた、の意味。夢姑がこう呼ぶ。「マン」と「モン」の中間音。
二弟 er2di4 アーティー 兄弟二番目の弟、の意味で、簫峯がこう呼ぶ。 ちなみに段誉は「二哥」と呼ぶ。
「er」は巻き舌、英語の「R」に近い。


暮容復 mu4rong2 fu4 ムーロン・フー ちなみに、親父は「愽 bo2(ボー)」ですね。
暮容公子 mu4rong2 gong1zi3 ムーロン・コンズー 暮容家のご子息、の意。
表哥 biao3ge1 ビャオガァー 王語嫣ちゃんがこう呼ぶ。「表」は異性の従兄弟に対する呼び方。


王語嫣 wang3 yu3yan1 ワン・イーイェン yuは口を丸めた「イ」。
王姑娘 wang3 gu1niang ワン・クーニャン 王のお嬢さん、の意。段誉や包不同や阿朱達がこう呼ぶ。
嫣妹 yan1mei4 イェンメイ 名前の後に 「〜哥」「〜妹」を付けて呼び合うのは「兄弟のように親しい仲」、
という意味合いです。実兄妹や兄妹弟子でないのにこう呼び合うように
なったら、恋人同士の含みがあることも。
阿朱 a zhu1 アチュー 簫峯(胡軍演じる)が大声で叫ぶと、「zhu」が「zho」に聞こえます^_^;
名前の前に「阿〜」をつけるのは「〜ちゃん、〜さん」の意味があり、幼名の前に
付けて呼ぶことが多いのですが、この場合もそうでしょう。
阿碧 a bi3 アビー 二人まとめて「アチューアビー」と呼ばれてました。
阿紫 a zi3 アズー 游担之は「阿紫姑娘(アズークーニャン)」、段誉は「紫妹(ズーメイ)」と呼んでましたね。
木婉清 mu4 wan3qing1 ムー・ワンチン 段誉は「婉妹(ワンメイ)」と呼んだりしていました。
夢姑 meng4gu1 ムンクー 夢の中のお嬢さん、の意味。虚竹がこう呼ぶ。「マン」と「モン」の中間ぐらいの音。


段正淳 duan4 zheng1chun2 ドァン・チェンチュン zhは無気音、chは有気音、「ng」と「n」も違う発音。カタカナだと同じじゃん^_^;
段王爺 duan4 wang3ye2 ドァンワンイエ 語尾につける「爺」は身分の高い人に付ける敬称で「旦那様」ぐらいの意味。
じいさんという意味ではない。「王殿下」という感じか。
鎮南王 zhen2nan2wang3 チェンナンワン 身分ですからねー
鳩摩智 jiu1ma1zhi4 チウマーチー チベット系のお名前ですね。
余婆 yu2po2 イーポー 譚婆、平婆婆など、語尾に「婆」を付けるのは、婆さんの意味ではなく、
ある程度の年齢があって、執事とか侍従長とか地位のある女性に対する
敬称の一種らしい。天山童姥は「小余」と呼んでましたし・・・。

★リクエストがあったら、↓のWEB拍手の一言メッセージで「○○の読み方も!」と書いて下さいねー。適当に追加するかも〜〜〜

謝謝!感想、ご希望まってま〜す