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今日の一冊   マニアックなページだよ〜〜行かない方がいいかもね〜

 私の読んだ本&漫画の忘備録。気まぐれに更新。ただひたすらに趣味の世界です。  

2004年4月18日
グイン・サーガ94巻「永遠の飛翔」 栗本薫  ハヤカワ文庫 
う〜〜ん、感動しました。
94巻にてのターニングポイントです。「人生を選ぶ決断」というものには、いつも心を打たれます。
この長い長い物語の始まった1巻の時から、突如ルードの森に現れたグインは、全ての記憶を失っていて、自分の名前以外は何も知りませんでした。
以来、ケイロニア国王となった現在までの長い旅の中で、自己アイデンティティがずっと彼の心を苦しめてきました。
なぜ自分は豹頭人身なのか?そもそも自分はどこからきたのか?記憶の断片にある「ランドック」とは、「アウラ・カー」とは何か?
それを知りたいという望みだけが、彼の唯一のウィークポイントだったと言えるかも知れません。

今回の話では、それに対する1つの回答と決断が描かれます。
全ての謎が明かされたわけではありません。彼が何の罪をおかして元の世界を追放されたのかも、そもそも他に「豹頭人身」の人間がいるのどうかかもわかりません。星船を降りた後の彼の身に、いったい何が起こったのかもわかりません。
星船のデータシステムは、彼の追放について公開を禁じられた情報として答えようとせず、また同族であろう星船の乗組員達はとうに死去して死体すら残っていないからです。

しかしそれ以外の決定的な事項、つまり、ノスフェラスと星船とグインとの関わりが明らかにされます。
カナン帝国が一瞬にして滅び、不毛の土地ノスフェラスが生まれた理由。白骨ヶ原の中で未だに放射能を放ちながらたたずむ星の船。グラチウスたち魔導師達やヤンダル・ゾッグたちが望み、知りたいと願っていた秘密、スカールが大きな代償とひきかえに見た秘密。
星船に残された指令とは、それを残した自分とは何者であったのか。
数万年も前に残された最後の指令のまま、忠実に彼の帰還を待ち続けていた星船。
記憶も知識も不確かなまま、追いつめられて星船を離陸させ、大気圏を離脱して、星々の海のただなかに立つグイン。
故郷であるランドック星に帰還することが物理的に可能であることを知った時、彼は初めて理解するのです。自分が何者であるのかを。
それはルーツのことではなく、自分の魂のあり方、自分の生きるべき道の選択です。自分の生きるべき場所、成すべきこととは何なのか。
記憶は戻らないまま、知りたいこともわからないまま、しかし、彼はすでにそれより大切な物があることに気付くのです。

パロにて、レムスの息子に擬態していた寄生膨張型の精神生命体・アモンの壊滅的な脅威が、彼に決断を余儀なくさせます。
数万年も忠実に主を待ち続けた彼の星船ランドシアに対し、彼は主としての最終任務を命じます。
彼が命じたのは、記憶が戻ったわけからでもなく、進化したからでもなく、ただ彼がこの中原世界でしてきたのと同じこと。グインがグインであるのは、記憶やルーツではなく、心のあり方がそうであるからなのです。
現在の彼にできるせいいっぱいの力で、中原だけでなく、“ソラー星系第三惑星”だけでもなく、全宇宙をこの脅威から守るために、彼はある決断を下します。

そして彼は、成功率の極めて低い賭け、地上に戻るための長距離空間転移を実行します。
それは、彼の忠実な船に対する訣別、母星に対する訣別、過去に対する永遠の訣別です。
彼が還ってゆくのは同族のいる彼方の母星ではなく、原始的なソラー星系第三惑星と呼ばれる星の、彼の愛する故国であり、彼の愛する人と彼を愛する人達のいるところ。
故国への熱い思いだけが、自分を無事に帰還させる唯一の鍵だと信じ、ためらうことなく彼は帰還を選ぶのです。
自分自身の人生を選んだグインは、もう二度と自己について心煩わされることはないでしょう。

星船の離陸時の炎で消滅してゆく白骨ヶ原の死者たち。
巨人族ラゴンのドードーは語ります。ノスフェラスがカナンの呪いから解かれる時、ノスフェラスは生き返ると。
ノスフェラスに再生をもたらした彼らの王は、果たして自分自身を取り戻すことができるのでしょうか。

10月22日
「陰陽師 生成り姫」 夢枕獏 文春文庫 581円
映画の陰陽師を見たので、ようやく手にとって読んだものです。
夢枕獏さんの作品を読むのは本当に久しぶりで、この陰陽師のシリーズを読んだのは実は初めてです。
感想を書く気になったのは、源博雅と阿倍晴明との会話がとても心に染みたからです。
形にならないものを描き出す文章は、確かにこの作者の持ち味の1つです。
人生の盛りを過ぎ、衰えてゆくものへの哀惜は、自分自身が同じ舟に乗るものだからとの言葉。
人の心にはみな鬼が住んでいるとの言葉。
理屈で納得しようとしても苦しくて他にどうしようもないから…との言葉。
そしてもののあわれを感じては、鳴らずにはいられない、まさしく笛そのものである博雅。
こういった言葉が染みいるようになったのは、私自身が年を経たからなのかもしれませんね。
読みやすさの割には、心に残る1冊でした。


10月4日
「聖戦記エルナサーガ2」 2巻 堤抄子 スクエアエニックス 552円
 現代版エルナサーガの第2巻、ようやくの発売です。月刊連載だから7〜8ヶ月で単行本1冊なんですよね。
堤抄子さんの作品はどれもテーマが明確です。
前作では、ここに聖者がいたらどうするだろうか?という設定で話を進めたそうな。今度の舞台は現代ですが、テーマはほぼ同じだと思います。
エルナは自分の素性を何も知らずに育てられた女子高生。
彼女は自分に力があることを知り、自分に何が出来るのか、何をするべきか、戸惑いながら落ち込みながらも歩きだす。
強大な魔法という力を求める者達、権力争いとテロ、謀略の中で彼女はどう行動していくのか?それによって周囲は、世界はどう変わっていくのか?
力を使うことの正邪、力を欲する理由の意味、一番大切なことはなんなのか?
現代に生きる勇者の道って何だろう?…という答えが、示されるかもしれません。
まだまだ始まったばかりですが、続きが楽しみな作品の1つです。


8月25日
「くらのかみ」 小野不由美 講談社 2000円
いや〜〜、装丁にやられました!!
見た途端に衝動買いしそうになる素晴らしい装丁です。ジャケ買いの人、結構多いんじゃないかな?
レトロっぽい紙箱の表紙にはぽっかり穴が、そこから村上勉氏のイラストの少年が顔を出す。中の緑でまとめられた装丁も美しい。よくこんな本を…!!というのが正直な感想です。
私の年代では村上勉氏の絵を見ると、さとうさとる氏のコロボックルシリーズを思い出す人が多いんじゃないでしょうか。村上氏の絵を見ただけで、懐かしさと冒険心で胸が躍るんですよね。強烈な体験なんだなぁ。

さて、肝心の内容の方ですが、ミステリータッチの児童文学です。こども向けということで総ルビ付き、話もそんなに長くありません。
児童文学としてもまあなかなかといったところで(シリーズ化するならもっと面白いんですが!)本当に守備範囲の広い方だと思います。
タイトルの「くらのかみ」は蔵の神、つまり座敷童子のことです。
山奥の古いお屋敷、集まった親戚のこども達、次々に起こる怪異は本家にまつわるたたりなのか、それとも…?子ども達の少年探偵団の推理は…?
冒頭の四人ゲームで出現する異常。明らかにどこかおかしいはずなのにわからないという怖さ、子ども達の世界のどきどきするスリルと楽しさ。そして不可解な大人たちの気持ち。
村上氏のイラストが、どこにでもありそうでどこにもなさそうな、わくわくして少しおどろおどろしい、子ども達の世界をうまく表現しています。
読書し終わったら、また最初から読み直して見たくなります。そんな物語です。

個人的には、三郎や師匠の本心や家との関わりがすごく気になるんですが、それは大人の物語になるんでしょうね。
主人公の耕介君が何年か後に、本家を訪ねる物語を見てみたい…う〜〜ん、贅沢かも??


8月5日
「創龍伝 13」 田中芳樹 角川ノベルズ 800円
 何はともあれ、創龍伝。久々の新刊です。
今回の舞台は日本。わずか1日の出来事ですが、竜堂四兄弟を巡る情勢は、相変わらずのハチャメチャぶり。
今回、新たな敵役として、謎の「閣下」、トカゲ兵、火山の中のバケモノ(本登場はまだ)などが登場します。
ああしかし、あの小○川奈○子という女怪(にょかい、にあらず)と同盟することになるとは……あ然呆然。
しかも幕府です、征夷大将軍でございます。
そして政府に対する嫌がらせとしてあげる幕府の政策には、失笑する人も多いでしょう。
そう、この小説は、現代世界への痛烈な風刺小説でもあるのです。
作者の硬骨精神と今の世界への怒りがこれほどストレートに現れている娯楽小説(それも一流の)は、他にないかも知れません。
社会の裏のからくりを見抜く目、真実を見抜く目を持たなきゃね…なんて片隅に思いつつ、物語は楽しむべし。
今回は仙界のお話は少なし。子犬の松山君は今日も勇敢なり。
それにしても、このお話、どこまで行くのかなぁ〜〜。

4月27日
「アースシーの風」 U・K・ル=グウィン 岩波書店 1800円 →2004年7月17日、感想というか書評、書き直しました。こちらへ
ゲド戦記シリーズの最終巻です。長い間3部作と思われていた作品に4作目が出て、その後10年を経てついに完結しました。
実というと、前作4作目「帰還」が、なんとなく消化不良な感じでした。魔法使いであること、女であること、竜のこと。
何故、魔法使いは男だけなのか?なぜ、魔法使いは結婚しないのか?男女の愛は魔法の邪魔なのか?
そして、竜に我が子と呼ばれる人間とは何なのか?人間と竜はどこで別れてしまったのか?
今作は、そのすべてに回答が得られます。その答えの意味は現実にも通用する、これこそが真のファンタジー!
今回、ゲドは冒頭に少し出てくるだけです。でも、すでに魔法の力を失ったはずの彼の言葉は、とても胸に響く。
今作、主となっているのは、すでの孫のいるテナーです。
王レバンネン、変化の発端となったハンノキ、カルカド帝国の王女、竜の娘テハヌー、そして人の姿から竜となったアイリアン。
真に生きること、真に死ぬということ、魔法の意味・・・そして男女の愛のこと。
まさしく名作にふさわしい、素晴らしい幕引きでした。何度でも読み返したくなる作品です。
書き直し書評はこちら。

3月16日
「華栄の丘」  宮城谷昌光  文藝春秋社 495円
文庫本1冊277Pという中編作品です。
文庫本になって再読して意外に感じたのは、以前単行本で読んだ時より、“まとまった好作品”との印象を受けたこと。
それから「宋」という国の不思議さです。
宋は商(殷)の遺民が立てた国と言われており、祖先の霊への信仰が篤く、古礼を重んじ、信義に篤い民族性の国です。
餓死しようとも楚への全面降伏だけはしないと、国人一丸となって200日以上も籠城し続けた頑固な宋の民。
それが、武力では勝てないものがあるということを楚の荘王に教えたというのは真実でしょう。
また祖霊への信仰の篤さは、「天空の舟」や「太公望」で描かれている商人(しょうひと)の姿と重なるものがあります。
あとがきの中で、宮城谷氏は「わたしは『荘子』を読みながら、宋人というものを考えて続けてきた気がする」と書いておられますが、その考察のなかから、今回の主人公である華元像が生まれてきたのでしょう。
出目で太鼓腹、親しみのもてる容貌を持ち、正当派で陽性の華元は、君主の文公から“公室の財をなげうっても”死なせたくない人物として愛されます。
必ずしも善人であったかどうかわからない公主鮑が良質の君主となれたのは、華元と王姫あってのことでしょう。
他国から見ても、それほど心の通じ合っている君主と宰相はほとんどなかったのではないでしょうか。
この作品にも顔を見せる晋の趙盾は、まさに霊公との争いの渦中にあり深く悩んでいるだけに、それが際だって感じられます。
詐術とは無縁でありながら、政変を乗り越え、内政にもすぐれ、晋楚両大国の和平をなしとげて、天寿を全うした華元。
読者としても、読んでいるうちに、おかしみがあって人としての懐が深い華元に、親しみと敬意を感じずにはいられません。
自分を生命の危機に陥れ、宋の公室にまで多大な損害を与えることになった羊斟について、恨み言も残さず処罰もしなかったのは。立派としか言いようがありません。例え華元が羊の事件で自分の行動を悔いていたからだとしても…。
襄公の孫の代の君主を影から支える王姫も、不思議な魅力を見せています。

この作品で心に残った言葉二つ。
「足下に落ちている塵を黙って拾え。それでひとつ徳を積んだことになる」
「人は大きな器量の人と会って、自分の器量を拡げてゆくのです。」
まさに、自分の成長の糧としたい言葉だと思います。


2月11日  
「神の守り人」来訪編・帰還編  上橋菜穂子  偕成社  各1500円
 “バルサが助けてしまった謎の美少女アスラは、災いの子か?”
古代を思わせる異世界を舞台とした児童文学の守り人シリーズ、待望の5作目、新作です。しかも初の上下巻。
このシリーズの主人公は、短槍使いの達人である女用心棒バルサ。
この世界ではすでに若くはない、30過ぎのバルサですが、野性の獣のようなしなやかさと能力を持つ一流の戦士であり、
また、過酷な半生を送ってきたために、穏やかな人生にまだ安住できないことに心痛めている人でもあります。
それでも迷いのない強さと、優しさを併せ持つバルサはかっこいい!
幼なじみの呪術師タンダとの微妙な関係も、なんとも言えないところです。
作品の多くは、「目に見えない世界」とかかわる人物が登場し、王家や権力者の陰謀に巻き込まれながら、
バルサやタンダ、チャグムと関わり、その交わりの中で自分自身ともう1つの世界の意味を見つめ、成長してゆく物語です。
作者は、文化人類学を専門とする教授でもあり、それが作品中にも良く活かされているように思います。
この物語世界では、アジア風のいくつかの国が登場します。古代日本のような国から、気候の厳しい山国、多くの島からなる海国など。
そして、それぞれの社会の中で見えない世界を語り継ぐ人々の多くは、少数民族や部族であり、蔑視されたり正当に評価されてなかったりします。
そういう背景の中で描かれる足に地の付いた良質なファンタジーと言えると思います。

今作を読み終えた時の感想は、「え、これで終わりなの?」でした。
安易なエンディングにはならないと思ってはいましたが、この後のアスラはどうなるのか、バルサを狙い続けた氷の女シハナはどこへ行ったのか…
気になることばかりです。
1作目の主要人物であったチャグム皇子が、後作にも登場し、外伝の主人公にもなったように、彼らもまだ後の作品に関わってくるのでしょうか。
助けること、迷うこと、自分自身に問いかけ続けるバルサ。
薄幸の少女アスラに、過去の自分を重ね合わせ、バルサは言う。
アスラに人を殺させてはいけない、穏やかな日々に安らぐことのできない闇が待っているのだから、と。
それはバルサ自身の本音で、黙って聞くしかないタンダの悲しみも心に残ります。
人間ってそういうもの、大人だって完全な生き物ではなく、常に自分自身の迷いと複雑な感情を抱いているもの。
それをきちんと描いているから、この作品は、大人の女性を主人公にしながら児童文学でもいられるのだと思います。
流れる物語の時間の中で、彼らの旅は交錯し、また続いて行く。次作が楽しみです。

2003年2月10日
「死者の書」  *本題は「死者の書・身毒丸」 折口信夫 文春文庫 590円
最初は、同名の「チベット・死者の書」のことかと思いました。
しかし、民族学者としても有名な折口信夫の、その取材と理解が存分に活かされた不思議な幻想歴史小説でした。
二上山に葬られた大津の皇子の魂と、その50年後に生きる藤原家の姫の交感のお話です。
旧仮名遣いで少し読みにくかったのですが、ゆっくり音読した方がいいように思えるほど、とても視覚的で、密度の高い文章です。
文章を読んで、こんなにぱ〜〜っとイメージが広がる作品は、滅多にないかもしれません。
古いやまとことばの美しさも印象に残ります。
しかし、古代のあてびと(貴人)の姫って・・・判断力を持ってしまうほど賢くなるのは好ましくないって…
古代人の精神は、個の意識が現代人とは全く違っていたということを、しみじみと感じました。
この小説を書く着想となった「山越阿弥陀図」を、ぜひ見てみたいものです。
川本喜八郎氏の人形によって映像化されるのが、とても楽しみです。

11月24日
 「隗より始めよ」 芝豪 祥伝社 1900円 本
 芝豪さんという方の書かれた小説・郭隗伝です。タイトルと西のぼるさんの装丁に惹かれて読んでみました。
この作者の作品は初めて読んだのですが、予想してたより面白かったです。
主人公が燕の郭隗ということで、ちょうど宮城谷氏「楽穀」と重なって興味深く読めました。孟嘗君や楽穀の姿には、違和感も感じた(特に楽穀の出身が…?)のですが、冒頭から青年・郭隗の婚約者の話から始まって話に入りやすかったです。
宮城谷作品とは人間の姿も読後感も違いますが、主人公には、勤め人であった作者の人生観が反映されているようです。
働きて、務めを果たし、後に去る。そういう人生に作者の思いが込められているようです。

9月7日
 「アニマル・コミュニケーター」 リディア・ヒビー&ボニー・S・ワイントラーブ VOICE 1600円 本 
 副題が、「あなたとペットはもっと会話できる!」と書かれたこの本は、アメリカで認められつつある「アニマル・コミュニケーター」の動物との対話記録です。
 動物と自由に会話できたら…と思ったことがある方も多いことでしょう。この本の著者は、そのプロフェッショナルです。
 動物サイキックとも呼ばれ、著者自身が無意識にずっと会話していたのもかかわらず、最初はうさんくさいと信じていなかったという方です。
 動物との会話は、映像や感情を投影するもので、幼児や子供時代に使っていたコミュニケーション方法の発展で、無意識に使っている方もいるそうです。す。
 その方法論自体はひとまずおいておいて…。
 私は、著者の体験談に大変心惹かれました。本の中には、沢山の心動かす体験談が詰まっています。
 手術台で、自分の産んだ子猫の生死を尋ねる親猫の話、オーナーの死を悲しんで人生に絶望し対話を拒否する馬の話、人間に親切にされたことのない犬の話、三角関係の馬の話、自分を人間だと思いこんでいる蛇の話など…。
興味を惹かれたらぜひ、ご一読をお勧めします。個人的には、私も一度このワークショップを受けてみたいものです。


5月16日
 「ダイヤモンドの道」 田村熾鴻・安祐子  太陽出版 本
 エイトスター・ダイヤモンドの田村氏の、「地球はダイヤモンド」「マインド・キャラット天孫」に続く三冊目。小説ではありません。
 9年ぶりの三冊目は、書くのに9年かかったという、社会的には眉をひそめられても仕方ないような出来事の連続でした。
 エイトスター・ダイヤモンドとは、「完璧な」カットをされたダイヤモンドのことで、ファイアー・スコープで光が完全反射するようにカットされたダイヤモンドは、八本の矢印と中心に易の八方位図が現れる。この不思議な性質については、前記3冊の著書に譲るとして、心に残った部分を少し抜き書きしてみます。
 「ダイヤモンドは、ダイヤモンドでしか磨けない。人の心は人の心でしか磨けない。他の人の反応があって初めて自らの心の状態を知る。
 気付いた者だけが、強い部分や余計な部分を引っ込めたり取り除いたりして、心を丸くしていく。」
 「魂の進化を遅らせるのは安定だ」(これはアダムスキーの言葉)
いろいろと考えさせられ、触発される本でした。

2月3日
 「指輪物語」 J・R・R・トールキン 評論社 本
  最近読んだ物ではありませんが、映画化でブームになりそうなちょうど良い機会ですので、書いてみます。
 私がこの本を読んだのは20年近く前でしょうか、外箱付きで赤の布貼り、ぶーぶー紙付きの地味な装丁でした。
 貧乏学生には1冊1800円?は高く、でも文庫でなく、どうしても大きな本で欲しかったので少しずつ買い求めました。
 これを読むことになったのは、私の最も好きな漫画家さんである中山星香さんに触発されてのことです。
 幼い頃から英国児童文学に心を遊ばせて育ったのに、
 古典のように呼ばれているこの作品を読んでなかったことに愕然としたものでした。
 個人的なことはそれぐらいにして、内容について、ネタバレにかからない程度に・・・。

 この作品の前段にあたる「ホビットの冒険」という1冊の作品があります。
 “小さな人”ホビット族の変わり者と呼ばれるビルボの冒険物語なのですが、
 このビルボ、終盤にふとしたことで1つの指輪を手に入れます。
 その数十年後、ビルボの入手した指輪を巡っておこる物語が Lord of the Ring、指輪物語です。
 ビルボから、この不思議な指輪を譲り受けた甥のフロド(正確には少し違う)が主人公です。
 平和に暮らしていたホビット族は、この指輪を求める者達に狙われて、恐ろしい戦いに巻き込まれていきます。
 それは、平和に慣れるうちに堕落し、闇の者に付け入られ始めていた人間達、
 そして、エルフ、ドワーフ達など世界中の全種族の命運を握る戦いの始まりでした。
 この燃やすことも壊すこともできない指輪こそ、闇の者の力の源たる、ただ1つの力の指輪だったのです。
 
 この作品は、冒険物語として、魔法使いガンダルフの活躍も、ローハンの騎士達の轟きも、エルフの悲しみも、
 しぶとく愉快なホビット達の底力も、勇ましい王女の戦いも、種族を越えた友情も楽しめます。
 しかしこの物語の本質は、指輪を巡る戦い=人物達の「心」の内面の戦い、を描いたものです。
 力の指輪は、その邪悪な力で、指輪所持者や周囲の人の内面に暗く働きかけてゆく。
 自覚されない暗い欲望と、ほんのちっぽけな意志の力をはかりに賭けて、強大な敵に絶望的な試みを挑むフロド。
 もっとも難しく辛い戦いとは、自分自身の心と戦うということ。
 人の内面に働きかける「力の指輪」、このモチーフを用いて、これほど人の精神というものを
 はっきり描いた作品は他に知りません。 
 未読の方、もし興味をお持ちになられたら、ぜひ、御一読をお勧めいたします。


1月16日
 「ジャッキー、巨人を退治する!」 チャールズ・デ・リント 創元推理社 本
  デ・リントの他の作品も読んでみました。かなり好きな作家になりつつあります。
  これもやはり、現代ファンタジーです。主人公ジャッキーは、ふとしたことから自分の住む町の、
  もうひとつの姿を見てしまいます。それは、人に混じって妖精達の住む妖精郷でもあったのです。
  彼女は、存在の薄れかけた妖精達のため、無謀にも巨人達に挑むことになります。
  臆病だった妖精郷の住人達も、彼女に引きずられるように動き始め、物語は意外な展開に・・・。
  普通の冴えない女の子なのに、何故か英雄となってしまうジャッキー(実はトリックスターの
  名前を持っている)と、親友ケイトの性格も面白いのですが、半分人間界と重なりあった妖精界の
  住人達・フォルクスワーゲンをキーなしで動かすアーカンや、ハーレーに乗って彼らを追い回す
  死の狩人達も生き生きとして、大変面白い。
  でも、作品的には「リトル・カントリー」の方がテーマがはっきりしていて、好みでした。

1月12日
 「リトル・カントリー 上・下」 チャールズ・デ・リント 創元推理社 本
   現代ファンタジーというジャンルを書くこの人の作品を読んだのは初めてなのですが、
   個人的に、久々のヒットでした!!
   現代のイギリスの小さな村を舞台に、若い音楽家の主人公が、祖父の友人(作家)から預かった
   限定一部の隠された本を見つけて開いたところから、物語は始まります。
   これを狙って動き出す謎のグループとの攻防、果たしてこの本とは何なのか?
   そして、もうひとつ、主人公が読む本の中の物語も同時に語られてゆきます。
   別々に進行していく二つの物語は、やがて交錯し、本の中の主人公である孤児の少女と魔女の
   対決は、原初の音楽=魔法を通じ、現実の音楽家と結社のリーダーとの対決に繋がってゆく。
   音楽とは何なのか?魔法の意味とは?世界とは??
   きちんと自分なりの意味と解釈がはっきりと述べられているのが素晴らしい。
   作者は、伝承音楽の演奏家で、本当に音楽の意味を知っている者にしか書けない物語だと思う。
   話が面白くて引き込まれるのはもちろんのこと、どのキャラクターもみな、愛すべき個性(悪役でさえ)
   を持ってイキイキと描かれているのも、素晴らしい!
   ちなみに、文末には作品中に出てくる曲の楽譜(全て作者が作曲したもの)まで載ってます(笑)。

1月4日
 「裁き司 最後の戦い−ネシャン・サーガ 3」 ラルフ・イーザウ あすなろ書房 本
    三部作の最終巻。筋立てに、キリスト教の影響が見えすぎるのと、少し描写が荒い部分が気になる
    のですが、キャラクターの書き分けも巻を進むごとに良くなっていますし、、何よりこの作品はちゃんと
    人間の本質を描こうとした正統なファンタジーです。
    真のファンタジーとは、異世界(架空の世界)を使って人間の本質を描くものであり、それ故、世界設定が
    その本質を表すために構築されるもの、という定義があるのですが(笑)、それに照らしても十分ですね。
    ラストの主人公の対決の場面も、期待を裏切らなくって良かった。
    「ハリーポッター」は、確かに面白いしアドベンチャーではあるけれど、人間というものを描く真のファンタジー
    ではないと思っています。
    異世界物、というだけで同列に扱われるのは遺憾に感じるのですよね〜〜。うん。

 「私が幽霊だったとき」 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ   本
    なかなか面白い作品です。以前に同じ作者の「九年目の魔法」という作品を読んだのですが、
    この作者は、古代から生き続ける名前も定かでない力ある存在=魔女、というものがテーマにあるようです。
    この作品も、「九年目〜」と同様、魔女と普通の少女(達)との対決、という構図なのですが、主人公の名前が
    終盤になるまでわかりません。主人公の4人姉妹のうち、自分が誰か思い出せない、という設定なのですね。
    魔女にははるかに力及ばない普通の少女たちが、いかにして、どうしても譲れない大切なものを勝ち取れるのか、
    筋立てはスリリングで、後半になると一気に進みます。
    普通の人間も、なかなか捨てたもんじゃない、って思える作品。個人的には後話がもう少し知りたい・・・。

 「三侠五義 上・下」 石玉崑  光栄  本
   えっと、プリンセスゴールドで連載されている「北宋風雲伝/瀧口淋々」の原作ということで、興味を持って
   読んでみたものです。私もあまり知らなかったのですが、この“包青天”というのは、中国では大変ポピュラー
   なお話なのですね。作者は清代の人です。
   北宋時代の名判官(後に宰相)と呼ばれた包丞と、彼を助けて働くことになる武芸達者な侠客達の痛快な活躍話。 
   この包丞は、額に三日月の印を持って生まれ、色が黒いために黒子と呼ばれた不思議な人物ですが、
   権力に屈せず、裁きが明快だったので“青空のような”人、「包青天」と呼ばれたのですね〜〜。
   この風貌のせいで、ドラマでも一目瞭然です。日本で言う遠山の金さん、ってとこでしょうか。
   お話は、三国志演義のような講談調で、だんだん主人公が誰だかわからなくなってしまう・・・(笑)
   あまり考えずに痛快なお話を楽しむのがいい、というところ。

 「D−邪神砦」 菊池秀行 朝日ソノラマ 本
   吸血鬼ハンターDのシリーズ13作目。久々の1冊読み切り。読み切りはいいですね!続きを忘れるということがない(笑)。
   魔界都市・新宿のシリーズも読みながらいつも思うのですが、この作者が書きたいのは、どんな荒れ果てた凄惨な
   世界であっても、何の超常能力がなくても、自分の心に負けないいじらしい人間の姿が一番強い、って姿なのかな。
   今回は少し従来の“D色”が薄いように思いますが、一時、Dの世界を味わうのは新刊が出た時の特権ですね〜。
   今回も“Dの世界”と天野さんのイラストワールドを堪能しましょう。


12月1日
 「ケルトの白馬」 ローズマリー・サトクリフ ほるぷ出版 本
     著者のサトクリフは、英国の児童文学作家で、古代ブリテンを舞台とした作品を書く歴史作家でも
     あります。史実を元に想像力を膨らませて描いた長編三部作が有名なのですが、今回は短編。
     イギリス・バークシャーの丘陵地帯に、古代ケルト人によって描かれた巨大な白馬の地上絵があります。
     これを元に、どうして地上絵が描かれたのか、歴史に埋もれた物語を紡ぎだした作品です。
     サトクリフの作品は、どれも爽快なハッピーエンドではありません。
     遠い古代、必死で生きた人々のその生き様の苦さと強さが常に根底にあります。
     生命を失うことよりも大切な物をかけて生きる、誇り高き古代人の姿は、たとえ失意に終わったと
     しても、人の心に響きます。表紙に使われた、緑なす丘陵の白馬絵の写真が美しい・・・。

10月27日
  「笛吹伝説(パイド・パイパー)」最終戦争シリーズ4  山田ミネコ メディアファクトリー 漫画
     文庫化の4冊目。出版社を変え、版を変え、いろんなバージョンで出てるのでもう何がなんだか
     わからなくなってます。でも描下ろしがついてると買ってしまうのがファンというもの。
     だって全部持ってるし、レコード(CDにあらず)まで持ってるもの〜〜(爆)。
     山田ミネコ先生の最終戦争シリーズは、昭和53年から始まっていろんな雑誌で、設定を同じくした
     短編が書き継がれてきたものです。それぞれの主人公達が絡まり合ってクライマックスに向かう
     あたりで、連載中断、いろんな事情で進んでないのですが、ぜひ最後まで読んでみたいものです。
     この作品は、今はなきリュウという雑誌で西塔小角君を主人公としたパトロール・シリーズとして
     連載し、徳間書店から単行本が出ていたもの。

10月26日 
   「孤島の姫君」 今市子 朝日ソノラマ 漫画
      寡作な今市子先生、久しぶりの短編集です。日常と非日常が入り交じる感覚を描かれるのが
      うまい方なのですが、短編集では話の途中で常識をひっくり返す展開が一段と鮮やか。
      不思議な透明感のある人物の表情は、引き込まれそうな魅力があります。
      内容は、ファンタジーから、本領発揮の不思議話(オールカラー短編)、ホラーコメディに、実録爆笑文鳥話まで
      盛りだくさん。
      カラーの美しさだけでも買う価値があるかも・・・、の一冊です。

10月25日
   「魔導士の掟3 裏切りの予言」 テリー・グッドカインド ハヤカワ文庫 本
      真実の剣というシリーズの第一部、魔導士の掟5巻シリーズの3冊目。
      長らく翻訳を楽しみにしていたシリーズなのですが、物語としては、ようやく乗ってきた、というところでしょうか。
      終盤ののりはなかなかいい感じ。
      ジャンル的にはトゥルー・ーファンタジーというよりもむしろヒロイックファンタジーの部類かな?
      エンターティメントよりは人間がしっかり書けているなと思うのですが・・・。評価は一通り読むまで控えましょう。